紅茶×ショコラ×レモンが見事に調和した涙のしずく。マリアージュ力に優れたショコラティエ

2008年オープン、谷中銀座エリアに入る手前の角を曲がった閑静な住宅街にひっそりある個性的なショコラガトーを楽しめるというショコラティエイナムラ ショウゾウ。

スペシャリテは上野の山のモンブラン、人気はドームショコラ、話題は涙のしずく。

オーナーは稲村省三パティシエ、キャリアは東京ヒルトンに始まり、スイス、パリで研鑽を積み、2000年に上野にパティシエ・イナムラショウゾウを2008年にショコラティエ・イナムラショウゾウをオープンさせました。

場所は少し分かり辛く谷中銀座エリアに入る夕焼けだんだんの石段を下りずにコンビニ角を左に曲がった奥にある前面ガラス張りのお店、谷中銀座の喧騒から離れ、閑静な住宅街でゆったりとした時間が流れています。
お店はアステリスク様に工房までガラス張り、白が基調で清潔感がある空間。
ホールの方は丁寧、特に時々工房から出て接客をしてくれる若いパティシエの感じの良さが印象的でした。

お席は8席程度あり、半分程度埋まっていました。
サイトには色々な種類のガトーは紹介されていますが、この日は8種類程度しかなくシーズンによってよく変わる様。

ドーム ショコラとアイスコーヒーを選択。

ドーム ショコラ

グラサージュは完璧とまではいかなくてもなかなか良く、光を反射します。
主な構成は最下層からビスキュイ、ショコラムース、ヘーゼルナッツムース所々にはチェリー、ショコラムース、グラサージュとなります。

口当たりは柔か、とても滑らかでヘーゼルナッツがよく香ります。
ビスキュイはムース等の水分を吸っていないのでべちゃっとしていません。
基本こちらのガトーは作り立てで在庫をコントロールしているので質は良いです。
ショコラムースは甘いですが、特有の苦味も持っていて良い濃厚さあり。
ヘーゼルナッツムースは香りは強くショコラよりもけっこう甘め。

ここで良い役割を果たしているのがチェリー。
そんなには入っていませんが、しっとりとして酸味とがあるのでアクセントになり最後まで重く感じさせません。

海外組でよくある、後までショコラを纏い続ける程強くはありません。
濃厚さを感じつつもこってり感を残さずそのバランスが絶妙、よく纏まっていて美味しいです。

アイスコーヒー

しっかりしたお味でチープさ薄さはなく相性良くいただきました。

涙のしずく

ドーム ショコラが美味しかったのでこちらを追加でお願いしました。
紅茶×ショコラ×レモンのムース系ガトーになります。
主な構成は下層からショコラガナッシュ、マカロンショコラ、ショコラムース、レモンクリームグラサージュとなります。
ドーム ショコラの時と同じ様に滑らかさがあり、ベルガモットは全体からふわりと香りますが、嫌味な程ではなく上品。
食べ進めると馴染んで特に感じなくなる程自然です。
ベルガモットはショコラガナッシュエリア辺りから香る様ですが、どれが特段香るという感覚はありませんでした。
ザクッとしたクランブル様な感触がマカロンショコラに当たり食感にアクセントを出していて、レモンクリームは香りが強く酸味もしっかりして印象的。
濃厚なショコラをレモンが中和してさっぱりいただけます。
ショコラに紅茶とレモンを配合は難しそうですが綺麗に交わり不自然さがないのは素晴らしいです。
他ではないお味で癖になるような魅力をもっています。
こちらも美味しくいただきました。

両方とも個性的でしたが、バランス感覚に優れているので初めてのお味でも美味しくいただけました。
ショコラティエらしくセンターはショコラ。
日本のショコラは食べやすいように濃厚さを抑えてしまっているところもありますがこちらは濃厚さと甘み、苦味を残しつつ他の要素で中和し重い印象を残しません。
濃厚さとさっぱりさを両方兼ね備えたお味を楽しめ、想像していたよりも試行錯誤を感じる完成度の高いパティスリー。
できればもう少しガトーに種類があると通って選ぶ楽しさもあるかもしれません。
有名ではありますが、もっと知名度が上がっても良いかなと思うクオリティでした。

テイクアウトとして、ショコラの谷中、カカオ70%を購入。

谷中

生姜×ミルクショコラのガナッシュ。
フォルムは夕焼けだんだんの石段と夕焼けをイメージ。
柔かで、最初から少し生姜のピリッときて甘みが強めなショコラを包み込むように落ち着かせます。
生姜味よりも刺激を感じます。

カカオ70%

柔かで、ほろ苦さとスタートは少し優しく徐々に香ばしさが漂うショコラ。
強さの中にも円やかさがあり、個性があります。