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宮坂

宮坂

星2つ半が平均

伝わる店主の深い想い、女一人利用でも心に染みるおもてなしをしていただけます

2015年オープン、表参道駅の根津美術館を囲む塀に沿い進むとライトにぼんやりと家紋が浮かび上がっています。
それが宮坂の世界への入り口、店名、看板などはありません。
お弟子さんが外で立っておられ、名前を告げると地下まで案内していただき、重い鉄の扉を開けていだたくとそこには静謐な空間が広がります。

店主の宮坂さんは、西の代表、未在で10年間務められた方でオープン前からかなり話題のお店でした。

今まで伺った中では、全体的なお店造りのセンスは随一。

隠れ家的なエントランスから得られる特別感と漂う香り、店内の壁は一面黒漆喰で湿度を感じる雰囲気。

器は江戸時代のものやモーゼル等素敵なものばかり。

名刺でもそのセンスは出ています。
厚めの耳あり和紙に両面ショップカードと片面店主名が書かれた2枚、両方から香の香り。
店主の名刺の方は明朝体にショップカードより強い印象を与える両面印字にはできない程の深い活版。
私はお店でここまでの質の高い名刺を頂いたことはありません。

これだけでも今後素晴らしいお店になるということが分かります。
ただ一方で素晴らしいセンスも感じる所から他店よりも期待が大きくなってしまうのかもしれません。

お料理の説明は丁寧で色々教えて下さり女一人でも気にかけて頂きとても光栄でした。
声は大きくないのに聞き取りやすいのも有り難く、硬いのかと思うと意外に緩いところもありリラックスできます。

箸は濡れ箸、アイスウーロンをお願いしたところコースターに小さな松の葉を添えて頂き店主の細やかさが伝わります。

こちらのお店は撮影禁止ですので記憶を手繰って記載する部分が多いのでいつもより増して曖昧な部分があるかもしれませんがご了承ください。

 

紫蘇香煎

赤紫蘇の香りは控えめ、あられ香煎が香ばしく柔らかなスタート

 

先付け

タイラギ、赤貝、白バイ貝
乗せられるのは辛味大根種、時期的に2週間程しかいただくことができない珍しいものでそこに色を添えるポリジ。

舞鶴のトリガイにその下には春菊のおひたし、その隣にはポン酢おろしが置かれ絡めていただきます。

器は細かく刻まれた澄んだ江戸切子。

トリガイは春菊のおひたしとポン酢おろしと一緒にいただくとバランスが良く良いです。

辛味大根種は少しピリッとしますが癖なく美味しく、タイラギ等にはジュレがかかっており京を感じるお味もあります。

 

お造り

塩釜のマコガレイに下に壬生菜、右にエンガワ
沖縄の206キロの本マグロ中トロ、下に敷かれるのは葉山葵

つけていただくのは

お醤油と昆布を調合→マグロorマコガレイ

柑橘にお塩を調合→マコガレイ

分けていただきます。

お醤油と昆布を調合したものはとろみがあり濃厚、マグロと良く合い美味しいです。
柑橘にお塩を調合したものは真逆でさっぱり、マコガレイの繊細な味を生かすので確かに断然こちらの方が良いです。

最近良いマグロをあちこちでいただいていたので、私的には全く違うタイプで楽しめる点が良かったです。

 

椀物

金目鯛に汲み上げ湯葉を包んだもの、下には胡麻豆腐。
ジュンサイとセリを浮かべ、上には柚子の子供(すごく小さいもの)が添えられています。

いただくと金目鯛は濃厚で湯葉がそれを和らげます、胡麻豆腐はもっちり。
出汁はさすがで、曇りなくすっきりしていて聡明なお味です。

 

焼き物

熊本天草の海鰻の素焼きに山椒のソース、下には兵庫丹波篠山で採れた無農薬の8種類のお野菜、鷹峯の青トマト(赤くなる前のもの)を焼いたものが添えられます。

サーブされた時から良い香り。
海鰻は海に生息していますが、臭みはもちろんなく皮は薄くパリッとしていて、脂は乗っていますが後引く感じがありません。
青トマトもジューシー、印象に残ったのは拘りと仰られていた無農薬の8種類のお野菜、こんなに野菜は味が力強くなるものなのかとその濃さに驚きます。
少しの苦味もストレートに出ていて海鰻が負けてしまう位でした。

器は江戸時代のものでした。

 

箸休め

パフェグラスにアシェットデセールの様に綺麗に三層になった美しい箸休め。
最下層には山形のアスパラ、中層に貝のジュレと焼き帆立、上層にスーパーフルーツトマト。
蓋として茶筅水が涼やかな葵桂が置かれています。
5月の京は葵祭、それに因んだ演出です。

最終的には混ぜていただきます。
アスパラは甘みが強く、スーパーフルーツトマトと合わさりバランスの良い箸休め。

 

八寸

揚げたての琵琶湖の地鮎、日本海の糸もずくと墨烏賊、うすいえんどうを炊いたものの冷製、国後のばふんうに下に京の汲み上げ湯葉、五月豆のおひたし、磯つぶ貝、鯛の粽寿司

地鮎はワタの少しの苦さがポイント、さっくり揚がっています。
日本海の糸もずくと墨烏賊は酸っぱいタイプではなく、うすいえんどうは癖なくさっぱり、この八寸の中で一番濃厚さがあるのは国後のばふんうに下に京の汲み上げ湯葉で自然な甘さが引き立ちます。
鯛の粽寿司も優しいお味の中、胡麻や仄かに木の芽の香りが漂いました。

 

炊き合わせ

賀茂の揚げ茄子、穴子玄米粉揚げに辛味大根の木の芽おろし、その上に万願寺唐辛子が添えられます。

サーブされた時から良い香り。
茄子はジューシー、穴子玄米粉揚げは甘いので木の芽のピリッとさはあまり感じずストレートな美味しさがある炊き合わせ。

 

強肴

初鰹を燻粉を付けて藁で燻したもの、ポン酢と生姜でいただきます。
燻した香りがしっかり伝わりとても良く、ですが一方で初鰹特有のさっぱりした新鮮さも残しています。
ポン酢と生姜で少しの刺激、香り高さと初鰹の良さ両方が楽しめ美味しい一皿。

 

お食事

お米は長野県飯山の悠多喜米(ゆたきまい)、毎日使う分だけ玄米から精米しているそう。
まずは煮えばなでいただきます。
水分を多く含んだ少し歯応えのあるお味、これはなかひがしでも恒例ですがこちらの方が少し固めでしょうか。

後は自家製のお漬物、赤出汁、クレソンの牛肉揚げ物とレモン醤油がサーブされます。

お米は一粒ずつが生きていて独立した様に旨さを閉じ込めているタイプです。

 

甘味

自家製の柏餅、お餅は厚めで弾力がかなり強く中は甘さ控えめの白味噌餡。
跳ねが強いので菓子切で切りにくいのが気にはなりますが、お味的には甘いものが苦手な方も美味しくいただけるお味。

 

お抹茶

宮坂さんが点ててくれます。

 

水物

円い器の中に黄金柑のゼリーが敷かれ、フリンジに沿って一定間隔に佐藤錦、シャインマスカット、イチジク、小玉スイカ、宮崎のマンゴーが置かれています。
中心にはビワのアイス、その上にお豆腐が少しかけられていて、ステビアが添えられています。
器はボヘミアガラスの最高峰、チェコのモーゼルの蓋付きガラスの器。
美しく、水物を映えさせます。

黄金柑のゼリーは甘酸っぱくフルーツが完熟しているのでお味を引き締めます。
ステビアは甘くフルーティーで小さくても存在感抜群、けっこう美味しいです。

残ったご飯はおにぎりに、最後は宮坂さんにお見送りをしていただきました。

 

お皿はどれもレベルはしっかりしており、美味しさがあり、安定さが見られます。
ただ丸く収まり過ぎてしまっていて、宮坂でしか見られない色が今回はタイミングも悪かったのか見ることはできませんでした。

ですが前述したセンスの良さの他にも接客も素晴らしいです。
至れり尽くせりの接客はその場で「良かった、また来たい」と思わせるのですが、宮坂は当日より翌日、染みるような良さがあります。
まるでいただいた名刺の香りようにじんわりと広がる感じです。

宮坂さんの華美ではない繊細な魅せ方、その深い想いにはとても興味があるので季節を変えて少し置いてからまた伺おうかと思っています。
お料理から強いメッセージ性は見られなかったですがそれでもそのままで終えるのは惜しいと思わせてくれる宮坂の世界でした。

DETAIL DATA

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