スープ炒飯発祥のお店。しっかりした上湯スープ×ハラっと甘めの炒飯が好相性で美味

1950年創業、有楽町駅から新橋方面へ6分程。線路沿いにある上湯炒飯、冷やし中華が人気メニューの慶楽。

岡本太郎や池波正太郎、吉行淳之介等、名だたる著名人も通ったとされる広東料理店として知られた存在。

本格路線でありながらもありそうでなかったスープ炒飯(上湯炒飯)を考案した柔軟性に富むお店です。

今回は話題の上湯炒飯をいただくために平日の16時頃訪問。
お店は飲食店が立ち並ぶ高架沿いにあり、白ベースに赤の明朝体フォントロゴの突き出し看板、赤の店舗テント、少人数向けのエントランスという｢街の中華屋さん｣らしい外観。

店内は少し年季の入った白壁に翡翠と思われる石を中心に置いた吊るし玉房結び飾りや中国の書が等が飾られ、天井は飾り板構造のすっきりとした造り。
そんな内観ですがBGMはピアノ旋律やジャズでカジュアルな雰囲気。
お席はテーブルのみ、入って見えるフロアはテーブル4卓程なのですが奥席もあるようでした。
中華系ホール独特の騒がしさはなくゆっくりお食事ができます。

お昼になると満席になることもあるらしいのですがアイドルタイムでしたのでお席は好きな場所が選べ、入って右側の仕切られた壁に龍の浮彫彫刻が施された席にしました。
ちなみにこの席は代表作に驟雨をもつエッセイストとしても活躍した吉行淳之介氏のお気に入りだったそう。
著名人への思いを馳せながら｢慶楽｣と掘られた深いカラーのハイバックチェアに座りお店の方を待ちます。

主なホール担当は中国系の女性で少し片言ですが説明にはスムースに答えてくれました。

渡されたメニューは思いの外分厚く12酒類くらいのセクションに分かれ各ページびっしりとメニューが記載されていました。
どれも写真はなく、中×英、横に日本語の文字記載だけなので想像はしにくいです。
お店の方に「有名なスープに入ったチャーハンがあると伺ったのですが」と言うとすぐに上湯炒飯だと紹介してくれました。

お茶はプーアル茶、6分程度で上湯炒飯はサーブされました。

上湯炒飯

想像以上に大きな器、もくもくと立ち上る湯気

上湯と言うだけありカラーは透き通ったゴールド系スープでなみなみ入っていてそこに浮ぶ炒飯

炒飯の具材はネギ、卵、細かくカットされたチャーシュー、上に海老が3尾

漂う香りは炒飯
スープをいただくと塩気はありますがあっさり系で後から頭角を現すクリアな深み、かなり熱々です

上湯と言うと清湯に金華ハムを入れて丸鶏に豚、牛のイメージ
こちらは上湯単体でいただかないので繊細に揺れ動くお味ではなく、複雑性はありますが主に鶏がらスープのしっかりしたお味

炒飯は旨みをぎゅっと含んだ、尖りはなく甘みがあるお味でふわんとした口当たり
ご飯と卵は適度についた焼き色で香ばしさがあり、塊は全くありません
高温でハラっと調理された｢スープに浸してしまうのがもったいない｣と言う人がいるのが頷ける熟練した仕上がり
丸く優しさのあるお味ですが特色も持っています
それはいただいているとスパイスを感じるチャーシュー
肉自体の旨み、甘さ、香りも保ちつつ八角で味付けられています
甘みのある炒飯は美味しいですが食べ進むと平坦になってしまうもの
そこに八角が鮮明に香りを残し、起伏を持たせていました
チャーシューの量は多め、これが炒飯をお味を引っ張っている印象です

海老は特に味付けはされていません
油分で軽くコーティングすることで本来のお味を保っていました

甘みのある炒飯と塩気のあるスープは黄金の組み合わせです

いただいているとスープに炒飯のお味が馴染んで良くなってきます
食べ始めは独立性の高い上湯スープでしたが、炒飯の油分と甘みがスープに交わっていくことで慣れて、味の浮きがなくなります

最後まで熱くご飯のくっつきもありませんでした
また、お雑炊みたいになってしまうかと思いきや炒めた油分のアドバンテージでご飯も必要以上の水分を吸収しません
よって最後まで炒飯として楽しめました

 

一見するとシンプルな具材で作れそうな気もしますが、上湯の中に炒飯を入れただけではこの様なお味にはなりません
スープは炒飯に味負けしないように、炒飯はふやけ過ぎないように、スパイスで平坦にならないように……
炒飯単品ですとややオイリーで重さを感じることがありますが、スープで上手く回避していて量があってもさらっといただけます
完成度は高く全く不自然さはなく、B級と片付けられない美味しさがありました

他のメニューも好評で餡かけチャーハンやそば、夏には冷やし中華も人気でかなり種類があるので通う楽しさもあります。
お店はランチを時間通りに取れない時も重宝する通し営業、気軽に歴史あるお味をいただけるお店でした。