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羽二重団子

羽二重団子

星2つ半が平均

タイムスリップしたかの様な静謐な空間

1819年創業、日暮里駅南口より3分程。純和風建築の日本庭園内でお茶がいただける数々の近代文学にも登場する羽二重団子。

船橋屋のくず餅と同じ位歴史は古く、東京の和菓子店の中でも指折りの老舗。
あのどら焼きのうさぎやでさえも創業は1913年、梅園も1854年。
京に話を移せば祇園辻利が1860年、中村藤吉が1859年、比べると当店はかなりの歴史をもっています。

羽二重団子は「藤の木茶屋」でお団子を供したところから始まり、そのお団子のきめ細かさがまるで羽二重の様だと評判になりそれが屋号となり現在に至ります。

お店は谷根千エリアで賑わう北口とは反対の南口を出た通りを鶯谷方面に進むとあります。
「文政二年創業 羽二重団子」と書かれた傘のついた突き出し看板に回りには柳が垂れ、入口には紺色の暖簾。
店前には正岡子規が詠んだ詩と共にお店の歴史が書かれた木彫り看板が立てられていました。

羽二重団子は文豪達に深く愛されたとされ、近代文学の作中にて数多く登場。
夏目漱石の吾輩は猫である、司馬遼太郎の坂の上の雲、泉鏡花の松の葉、田山花袋の東京近郊、正岡子規の道灌山等の誰もが知る有名作品に羽二重の文字を見て取ることができます。

訪問回数は2回。
両日ともに平日ということもあり空いていました。
お客様はリピーター様が多く年齢層は高め、お店のホールは落ち着いた年齢層の女性のみで丁寧な受け答えです。

建物自体は築50年程経っていて、特にリニューアルはされていないのでやや薄暗く、空間の取り方が大きい現代のレイアウトの差異から歴史が滲み出ていました。
入って奥にはカフェエリア、評判の日本庭園がガラス越しに見えます。
左手にはお店の歴史的資料を紹介するスペースが設けられていて震災や大火を免れた明治期の歴史ある商家の帳簿等の商売・家財道具が展示され、右手にはショーケースがあり江戸~明治期の陶器が飾られちょっとした日本歴史館のよう。

カフェは全てテーブル席、一面ガラス張りで日本庭園を真正面から捉える構図。
あまりないことに当店は日本庭園に出ることができ、お外でお団子がいただけます。

看板メニューは二種類、羽二重だんご(餡・焼各1本と煎茶付き)540円か抹茶セット(餡・焼各ミニサイズ1本と抹茶)702円。
オーダーは羽二重だんごを選択。

前回同様今回も庭園でいただくことをホールにお伝えし運んでもらいました。

庭園に出ると長く伸びた竹林が色を与え、池には優雅に鯉が泳ぎ、庭園には欠かせない立派な灯篭、最奥にはお稲荷さん。
敷地面積自体は決して広くありませんがそれが功を奏して迫ってくる世界観は強く、見上げると竹林の中にいるかのような錯覚さえ覚えます。

畳のベンチに座り目の前に広がる景色は別世界。
生い茂る様に佇む竹林が風に靡き生活音をかき消しざわざわと音を奏で、光を透過した透明感のある緑と覗く空の蒼さ。
そこに日光がレンズ越しにフレアを起こす程に強く輝き光を届け、地に竹文様の影を色濃く落とします。

木々の影は美しいもの。
ですが竹林が落とすそれは日本ならではの繊細さがあり供された羽二重に映す時に柔かに特に力強く風に揺れる陰影は歴史と重なり更に情景を深めていきます。
視線を落とすとゆったりと泳ぐ鯉、時を止めた空間が広がっていました。

羽二重だんご

供されたのは急須に入った煎茶、焼きと餡団子

羽二重団子は滑らかでざらつきが一切ない、柔かですが弾力もありもちもちとした食感があるのが特徴

ちなみに羽二重というと非常に柔らかいお餅を想像される方がいらっしゃいますが、羽二重と羽二重餅は無関係
羽二重餅は餅粉に砂糖や水飴を入れた和菓子です
また、和菓子ではない羽二重というと京都出町ふたばが有名でこちらもとても柔らかな印象ですがふたばは羽二重もち米を使用していることを指しています
羽二重団子の由来は前述通りもち米ではなくきめの細やかさなので、使用しているのは庄内産ささにしきを自家製粉したもの、よってふわふわ系のお餅ではありません

炭火で焼いた焼き団子の方ははやや温かい状態、焼き色をつけた生醤油団子
芳ばしさと焦げ目からうっすら苦味がある大人向けのお味
醤油自体はキリッとしていて甘みはなく、深く醤油を染み込ませていませんがお味はしっかりとそして粋に香ります

餡はこし餡でよく濾してあり粒感は全くありません
餡の量で団子はやや小さく、餡自体の甘みはそれなりにありますが小豆の香りも残っています

煎茶はやや薄いでしょうか、量はたくさんあるので庭園を眺めながらゆったりいただきました

いついただいてもお餅の質は安定、新しいお味が出たり目新しいことはせず昔ながらの良さを守り続けています。
培ってきた歴史とプライド、守っているものはそれだけではない文豪達へのリスペクトにも受け取れました。

優しいお味のお団子と肌で感じる日本庭園。
ガラス越しの視覚だけでは分からない、そこにある空気、風の音、目を刺激する光、五感で届ける日本の和。
ただ見ているだけでは分からない触れてみて分かること、これは他方面でも言えることかもしれません。
この建物はその内改築されるそうですが、外からではない中に一歩踏みれることで伝わるリアルな異空間でした。

DETAIL DATA

ico

アクセス、営業時間など

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