営業は月4～8日のみ。大正時代の家屋は案内もなく通りからも見えない正に隠れ家カフェ

2006年オープン、目白駅から8分程。中庭に足を踏み入れて初めて大正時代から続く外観を現す幻級に営業日が少ない花想容。

大正時代、1922年に建てられた中庭を有する日本家屋で当店のベースは小紋や袖、オリジナルのお着物や帯、小物等を販売、絞り染め教室や着付け教室まで行う着物店。
当店はお着物や小物に囲まれ過ごせるカフェとしてオープンしました。
現在の営業日は僅か月4～8日と大変少なく、詳細はweb上で確認できます。

隠れ家と言うに相応しいカフェ、事前に営業日を確認し土曜日15時頃初訪問。

花想容は閑静な住宅街にあり、外観は和風建築の個人住宅で大正時代の家屋には見えません。

周辺のお家と変わらないので見落としそうになりますが、ひっそりと道路のL型側溝に置かれた立て看板が目印。
一見すると「きもの 花想容 OPEN」としか見えませんが、看板の上に小さなカレンダーが貼られていて営業日が書かれています。
これが花想容へのサインでここから知ることができるカフェの全情報。
奥に見える看板に向かい木のステップを進むと緑溢れた中庭に繋がります。

ここからは世界は一変、木々が生い茂り遮るその先に大正時代の建物が姿を現します。
縁側の細い木枠造りのガラス戸に簾が下がるテレビで見る様な大正時代の個人宅。
飴色になった木材は優しくでもどこか儚さがあります。

敷地自体に然程余裕はなく広角ではない単焦点は全景を捉えることができませんでしたが、繊細さを感じさせる造り。
大人数で頻繁に出入りすると傷みを与えてしまいそうです。

中庭を更に進むと縁側に脱靴場があり、靴を靴箱にしまいガラス引き戸を開け店内へ進むと品良く着物を着こなした細身の綺麗な奥様が迎えてくれます。

ここまでカフェの案内は看板も入口の案内でさえも何もありません。
よって中庭に入って来られる方はいらっしゃるのですが、何も書かれていないため皆様帰ってしまわれます。

ここまでコンディションが揃えば自ずと来店者はこちらが着物店と知ってる方々のみ。
お客様を阻む様にも思えるかもしれませんが、当店はお着物や和に触れ静かに過ごすカフェ。
利益優先で営業はしていないので、このスタイルの方がお店のコンセプトが伝わりやすいのかもしれません。

店内は静かに時が流れ、通路を行く隅々に可愛らしい小物が展示販売されていてお手提げや草履、かんざしがガラス戸から降り注ぐ外光を受けて柔らかく輝きます。

カフェエリアは和室一室。
日本家屋はちょっと寒いというイメージがありますが、適度に暖房が効いていて快適です。

壁際には撞木にかけられた帯が展示され、額入り障子側には反物飾り棚、床の間には着物が飾られている着物に囲まれた空間。
床は綺麗に磨かれ、建物細部も大切に扱われてきたのがわかります。
日光をガラス越しに受け店内は明るく、丸みを帯びたペンダントライトが優しく照らしていました。

お席は2名様がけテーブル4卓で椅子とソファがありどの席からでも中庭が見えるようになっています。
2卓埋まっていて、奥のソファ席に案内されました。

テーブル1卓に椅子は2席、受ける印象としては少人数で過ごすカフェ。
繊細な物が多く展示されているので、小さなお子様連れは不向きかもしれません。
撮影は快く了承して下さいますが、店内は広くないのでコンパクトカメラまでが良さそうでした。

お店の方はとても感じよく温和で控えめな方々。
建物も接客共にとても素敵な空間で、感覚的には歴史あるお宅におじゃまさせて頂く感じです。

メニューは甘味のみとなり、あんみつ、本日の和菓子、本日のケーキの3種類。
ドリンクセットにもできて、お抹茶、ほうじ茶、柚子茶、コーヒー、和龍茶となります。

オーダーはあんみつ、お抹茶セットにしました。

お抹茶

丁寧にもちろんダマなく点てられたお抹茶
もう少し濃くても良いかなとも思いましたが、いただきやすく特にこの空間によく馴染みます

あんみつ

ふち飾りガラス皿に天草寒天に豆、ピンクとグリーンの求肥、粒餡を乗せ、黒蜜をかけてあります

黒蜜はかなりとろっとしていて芳ばしくしっかりしたお味
豆は適度な塩気、寒天はやや酸味がありますが喉越しよくすっきりします
粒餡は豆の香りが生きていて、甘めですが寒天と良く合います

ガラス皿は光を透過し、アルミの受皿に反射し清涼感を演出する綺麗さがあるあんみつでした

 

視界に入る色は多くなく今の多色に慣れてしまうとやや寂しげに映ります。
ですが、個々の色は深みがあり余計な飾りはなくてもそのままで瀟洒な雰囲気を醸し出せるのは歴史がなせる業なのかもしれません。
心落ち着き柔らかくなる空間、季節によって表情を変える中庭に出会いに行きたくなる和カフェでした。