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銀座しのはら

銀座しのはら

星2つ半が平均

つるべ盛器や八寸、魅せるお料理。お味だけでなくお話も素晴らしいお店

2016年オープン、銀座一丁目駅から1分程。中央通りから一本入った所にある、滋賀の人里離れた場所にありながら超人気店に押し上げたのにも関わらず銀座に移転、同年最もブレイクしたお店の1つ銀座しのはら。

場所は中央通りから一本入った所にある新築のハビウル銀座Ⅱの地下。
エントランスは二段階でビルらしい前室というより風除室用のガラス開き戸を開け、左側に大きな杉玉が下がる引き戸が本エントランスとなります。
内装は入って右に掛け軸、正面に白木L字型カウンター11席。
壁の麻の葉文様の陰影が柔らかく、暖色系の温かみがありリラックスできる色彩空間です。

店主は篠原武将氏。
数々の名店を生み出す招福楼、京の予約困難店山玄茶等で修行し生家の滋賀三雲に日本料理しのはらを開店。
アクセス難を物ともせずに滋賀のNo.1と言われるまでに成長しましたが2016年突然の銀座へ移転。
勝負に打って出たとも言われていますが、偶々新築のビルが銀座にできるという紹介で銀座進出が決まり最初からこのエリア狙いではなかったそう。
ですが移転と言うのはどんな人気店であってもリスキーなもの、成功率は僅か約3割とも。
そんな中、食材選びも一からのスタートでお水も静岡から取り寄せ休日も休まず努力を続けられています。

店主の人柄は評判通りで話しやすく面白い、お弟子さんに対してもソフト。
積極的ですが自信家ではなく他店を蔑むようなことは言わず個性の一つと捉える人良さがあります。

お味は隣が京都だったということもあり関西系。
招福楼は未訪なので分かりませんが、私的には約6年間在籍されたという山玄茶の色を感じさせるものでした。
何事にも縛られない自由さと遊び心、それをエッジさではなくソフト(薄味の範疇ではなく)な味わいとして表現する山玄茶の流れがあります。

感性のままにお料理を創造するという篠原さん、その卓越したセンスで真っ新な世界に色を吹き込みしのはらでしかないお料理を作り上げます。
例えばお食事は三段階、炊き込みご飯→出汁をかけたご飯→雑炊と異なるお味を提供。
通常は季節定番のお皿がありますがそれは敢えてせず、毎回新しい出会いをさせてくれます。

<2017/06>

今回も楽しみしていたので、夜までご飯はいただかずしのはらさんに訪問です。

素材により出汁の強弱のつけ方も素晴らしい回でした。
素材を活かす手法を取られているお店はありますが、篠原さんはそれがどことも違い体に馴染みやすいお味で仕上げてくれます。
ボリュームはあっても、翌日にはお腹に残った感じはなく疲れることもありません。

盛付も毎回のことながら美しく、つるべ盛器の演出等はかなり高額なお店でなければ経験できないこと。
素材も良い物を使われていらっしゃいますし、お弟子さんも多くいらっしゃいます。
お値段を見ると、不躾ながら気になってしまいます。
伺うと大将曰く、産地ブランドには拘らず美味しい素材を見つけ出し、お値段には反映させたくないとのこと。

お忙しく体調も大変な時期もあるようで、それを感じさせず笑顔で迎えて下さる大将には頭が下がります。

日本料理店に行ってみたいけど、楽しめるか不安・・・という方にも当店は大将を始めお弟子さん全員が笑顔で迎えてくれます。

毎回1人で、お酒を多くお願いすることもない私でも心いっぱいのおもてなしをして下さるのが銀座しのはら。
こんなにして頂いて良いのかな、と思ってしまい感謝がたえません。
今日も美味しくそして笑いが絶えない一時。

ここは"銀座の日本料理店"ではなく篠原さんの銀座にある日本料理店、全体を大将とお弟子さんの色で染めたこの日の夜の流れは以下になります。

香煎茶

先付け 自家製の玉子豆腐、北海道の雲丹、青森の天然じゅんさい

井戸のつるべを模した盛器

開けると氷が敷き詰めてあり涼し気な演出、魅せ方も本当に素敵です

器には自家製の玉子豆腐、北海道の雲丹、青森の天然じゅんさい、最初に大将が生きていた状態を捌かれていた牡丹海老

じゅんさいは初夏の涼やかさを、牡丹海老はフレッシュさを、胡麻豆腐は少し固めに仕上げることでそれぞれの食感も味わえます
さっぱりし過ぎないように、雲丹には濃厚さが出ていて良いバランスとなっていました

爽やかで適度な酸味、スタートで強すぎないのがしのはらさんの良さ
刺激するような強さがなくても次のお皿が楽しみになる食欲も増してくるお味です

椀物 噴火湾の毛蟹、オクラの擦り流し

いただくと出汁は少しとろんした口当たりに昆布が優しく香る今までで一番控えめな味わい

毛蟹真薯をいただくと、素材の濃さに驚き
旨み、甘み、程よい塩気、正しくセンターのお味
目が覚める様な毛蟹の風味でしたのでお聞きすると、何も手は入れずそのままスチームで蒸しあげたとのこと

一緒にいただくと出汁との相性が素晴らしく、ここで出汁を強くひいていない意味が明確に
出汁はご自身でひかれるという大将、素材によって異なる側面があり器用さと柔軟さが見られます

なかなかここまで変えることは難しいはずですが、臆せず活かす方式を選ばれているのが印象的
お味もそうですが、その想いも素晴らしい椀でした

お造り 対馬クロマグロ、千葉マコガレイ、五島列島アオリイカ

オールドバカラの器に映えるお造り
昆布醤油の煮凝り、辛味大根、錨型浜防風が添えられ、別皿で土佐醤油と酢橘塩が置かれます

艶がある鮪は寝かせて1週間程、最初はかためだったそうですが徐々に良くなったそう
難しいこのシーズンでも旨みがあり、仄かな鉄分もあるお味

アオリイカは甘みと柔らかさがあり、マコガレイの弾力は驚き
厚めの切りつけで跳ね返り、色褪せない風味が楽しめました

鮑と鼈出汁のご飯

千葉勝浦の鮑に鼈出汁を合わせたご飯、柑橘を纏わせて

鼈出汁とうっすらと鮑の旨みが移り香となっていて好相性

鮑の柔かな弾力と肝の濃厚さもアクセントになっていて美味しくいただきました

八寸 

6月に行われる行事、茅の輪くぐりを表現した八寸
絡めた鉄線が色を添えます

葛屋根の中にはきゅうり、くらげ等様々な素材が見られる白和え
一寸豆のこのわたかけ
岡山の糸もずくに昆布香る白瓜
滋賀県湖南市三雲の猪
おかひじきのお浸し
シュガートマトに黄身酢を乗せて
明石の穴子
佐島の蛸
三河湾天然車海老
卵真薯
庄内麩チーズ挟み
琵琶湖の天然鼈揚げ
北海道鰌揚げ

牡丹海老頭揚げ

三雲の猪はにおいが一切なく、柔かで癖ない旨みが秀逸
一寸豆のこのわたかけはお酒が進むお味、シュガートマトでフルーツの様な甘み、庄内麩チーズ挟みではクリームチーズとの酸味が良く合っていました
鼈揚げは毎回のことながら、脂が乗っていて美味
鰌を揚げたのはあまりいただいたことがないのですが、ソフトな美味しさがありサクッといただけます
牡丹海老頭揚げは最初に供された海老の頭の部分、サクサクで全ていただけました
見て楽しみ、いただいて季節を感じる安定感のある八寸です

フォアグラ最中

今回はマンゴー、フルーティーなお味も合っていました

焼物 鮎と鰻

近江八幡の鮎と琵琶湖の天然鰻、木の芽をかけて

鮎はたで酢を少しつけていただくのですが、そのままでも滋味深いしっかりしたお味

天然鰻は脂のりよく繊細なふわっと感があり、木の芽が目立ち過ぎないのが良いです

焼物 トリ貝

三河湾のトリ貝をなんとフライで
すだちをぎゅっと絞っていただきます

風味が溢れ、肝の深みもありこういう美味しさもあると新しい発見
素材の風味が主体の重くない焼物

鱧と鮑の鍋

千葉勝浦の鮑と淡路の鱧

鱧、右は生の鮑、左は蒸した鮑
最後に酢橘をかけてさっぱりといただきます

丁寧に骨切りしていただいた鱧はふわりとした口当たり
すっきりした出汁に食感の異なる鮑のそれぞれの美味しさをいただけました
生は食感の良さと出汁を深いものにしていて、蒸しは風味が良好でした

お食事 生姜ご飯と煮物

煮物は賀茂茄子油煮と子芋、三度豆

生姜のご飯はシンプルながら、尖っていない美味しさがあります
牛肉のしぐれ煮ととても良く合い、煮物と一緒にいただけば生姜のご飯の良さが増すようでした

<生姜ご飯×鼈のお出汁で炊いたふかひれ餡かけ>

ふかひれ餡の旨みが前に出て、生姜が支えています

<生姜ご飯雑炊>

シンプルにすることで出汁の良さをダイレクトに感じられ美味でした

甘味 紫陽花金団

水信玄餅の様に透明な水菓子の中に光る紫陽花の華

寒天なので甘さも控えめで綺麗な姿とマッチしています

抹茶 

なんと大将が点てて下さいました
今は新しいお抹茶を探されているそう、こちらのお抹茶は苦味とクリアなお味をしています

今回も本当に楽しいお食事をさせて頂きました。
松茸が良いという私の希望で次回は10月、訪問させて頂くと夏場もお願いしておけば良かったと思ってしまうほど。
秋のしのはらさんが今から楽しみです。

<2017/04>

今回もお料理の流れが素晴らしく、随所に春を感じるお皿達。
桜を全面に出すと品が無くなってしまうものですが、忍ばせ方にセンスがあり一瞬で通り過ぎる桜の儚さをお料理に投影されていました。

いつも通りお腹いっぱいになっても重くない、自然体で角がなく優しく迎えてくれるお料理です。

前回はお弟子さんの人数も少なかったのでフルスロットル状態でしたが、3人の方が増えられていました。

店内はいつも通り笑いが絶えず、この面白さは銀座エリアでは「しのはら」と「あらい」が双璧。
大将とお弟子さんのやり取りは面白くて誰もがツッコミを入れたくなり、会話に参加したくなります。
誰にでもフラットな大将の強い魅力とお弟子さんの個性も光り、堅苦しさなく誰でも楽しめる空間がここにはあります。

連日忙しくお疲れの様ですが、前を向き華やなお料理と細やかな説明、そしてお気遣い。
抜けがないので確かに体調が心配になってしまいます。
目まぐるしいスピードかと思いますが、ゆっくりと楽しんでいきたいお店です。

先付け 伊勢海老、キャビア、うすいえんどう、本ミル貝、雲丹、本蕨、ウド、花山葵、加減酢煮凝り寄せ

徒然草巻物型の器を開けると美しい彩りの先付け
伊勢海老、キャビア、うすいえんどう、本ミル貝、雲丹、本蕨、ウドが入っていて紅いのは浜防風の軸の部分
伊勢海老には強すぎない仕事がしてあり、本ミル貝は上品な食感
雲丹は青森ダイセンのもの、安定した美味しさで甘く口溶け良好
先付けらしい加減酢のソフトなアプローチ、春の装いの先付けです

椀物 帆立の真薯とばちこ かたくりの花と木の芽を添えて

ふわふわの甘い帆立真薯にすっきりした昆布香る出汁は相性抜群
そこに厚みのあるばちこ、お椀に浸して少し柔らかくしていただきます
ばちこは塩気ではない純粋な濃縮した旨みが前にでてきて、全体に深みを出します
優しさの中にばちこで起伏をもたせる纏まりの良い椀物

お造り アオリイカと大間の赤身・中トロ 錨型浜防風を添えて

アオリイカは長崎産2キロ
包丁を入れてあり、酢橘塩でいただきます

赤身、中トロは大間の鮪を-60℃で冷凍保存したもの
昆布醤油の煮凝りや土佐醤油でいただきます

丁寧に包丁を入れたアオリイカは大物でも大変柔らか、程よいねっとり感も味わえます
赤身、中トロはすっきりした旨み、冷凍ですが状態は良好です

殻付き紫雲丹、紹興酒漬け牡丹海老

山葵の葉を乗せた一品
山葵の葉と香り付けのスライスされた酢橘を退けていただきます

雲丹は下北半島のもの、塩水でお味がついているのでそのままで
牡丹海老はさっと紹興酒に漬けているので強くはありません

紫雲丹の風味良く、紹興酒漬け牡丹海老がふわりと香り濃厚であってもくどくなく後味綺麗にいただけるセンスの良い一皿

蒸し鮑

真空状態で蒸した青森の鮑、味付けは少量のお酒のみ
蒸しも鮑から出た水分なので鮑の本来のお味のみで仕上がっている一皿
下には肝と甘いシャリを合わせたもの

鮑は柔らかく風味が上品、甘めのシャリも優しく角なくいただけます

お酒 七本槍

滋賀の銘酒
甘く、フルーティーでありながらパワーもある風味がしっかりした日本酒
酔いが早いので、わざわざ少量でご紹介いただき恐縮です

八寸

桜を添えた華やかな八寸

内容は小鮎、葛屋根には青干しゼンマイ、小皿に絹もずく、六角小鉢には筍の白和え、レンゲ型小鉢には蕗と海鼠腸、小鮎、蛍烏賊、卵真薯、車海老、菜の花、鯛の子、蛸の桜煮、庄内麩チーズ挟み、揚げ物はタラの芽と蕗の薹

小鮎は琵琶湖のもの、砂を噛んでいることがあるのでお腹を潰してあります
芳ばしく小さくても旨みあり

青干しゼンマイは燻しながら干したもの、癖なくお酒がすすみます
蛍烏賊は藁の薫香が心地よく、旨みが強いです
卵真薯はふわふわ、鯛の子は淡路のもので炊いてありこちらも素材のお味が良く出ています
庄内麩は醤油に漬け、クリームチーズを挟んだもの
面白い組み合わせですが、弾力のある庄内麩とクリームチーズは良く合っていました
蕗の薹揚げは中に金山寺味噌が入ったもの、こちらは春の鉄板の組合せです

美しいだけでなく、それぞれに個性があり今回も素晴らしい八寸でした

あんぽ柿のフォアグラ最中

炊き合わせ

筍と穴子、蕨を干瓢で結んだもの
大原木(おはらぎ)と呼ばれるお料理
昔京都大原で薪などを頭に乗せ行商した女性を示した大原女(おはらめ)から由来しています

京都の筍は春らしい少しの苦味、明石の穴子はふわふわで甘いので相性良いです
出汁も前に出過ぎず、素材を支えていました
お味だけなく古伊万里の器からも春の軽やかさを感じる炊き合わせ

焼き鼈とホワイトアスパラ

こちらも定番、今回添えられるのはロアーヌ産ホワイトアスパラ
南天の葉を退けていただきます

たれは奥深くまで浸透させていないので足りない場合は大将から追加でかけていただけます
いつも通り味わい深く、脂肪もぷるんとしていて蕩けます

ロアーヌ産ホワイトアスパラはジューシーでお味が濃いので鼈にも負けていませんでした

花山椒鍋 熊と猪

花山椒は滋賀のもの、今期はとても高いのだとか・・・
熊は滋賀と岐阜の県境で獲れたもの、猪はウリ坊とはまた違う子猪だそう

花山椒はこれから2~3週間楽しめる春らしい刺激と香りを楽しむもの
ピリッと清涼感も強いのですが、熊の滋味深いお味も引けを取らず良い組み合わせに
牛肉程の華やかさはありませんが、じっくり旨みが堪能できます

子猪も濃いお味をしていますが、熊に比べるとややさっぱりしていて違いを楽しめます

お食事 筍ご飯

山盛りの京都産筍をシンプルにいただきます
お米は滋賀の日本晴
見た目は水分が多く柔らかに見えますが、粒感がある硬質米
春のお味をダイレクトに楽しみます

<筍ご飯×鼈のお出汁で炊いたふかひれ餡かけ>

出汁でシンプルから華やかななお味になります

<熊鍋出汁の雑炊>

シンプルだからこそ、真っすぐに旨みが伝わり美味
今回はこちらのおかわりをいただきました

華麗に顔を変えるお食事、美味しく楽しくいただけました

甘味 桜金団

ふわふわの口当たりに、中は粒餡
甘さ控えめで小豆としての風味が良くでています
小豆には桜の葉も散りばめられていて、奥ゆかしく春を感じました

抹茶

奈良の古都華
大きな苺で糖度、柔らかさ共に素晴らしく美味

次回は6月、楽しみです。

<2017/01>

今回も訪問時間は17時、この日はお客様の来店が徐々だったためスタートは私とお隣の男性の2人。
物腰柔らかく素敵な方は誰かと思えば三玄茶の方でした。
お料理のいただきかたや器に対しての知識は当然ながら私と比較にならないものでしたが、しのはらさん達と一緒に三玄茶の大将やお店のエピソード、京都のお話ができまた三玄茶に訪問したくなりました。

しのはらは2回目ですが、今回感じたのは自然と入ってくるお料理だということ。
お味に丸みがあるのでいただいていて疲れないのです。
しのはらさんはよく田舎らしさを残すと仰っていますがこれがお味の優しさ、時より見せる素朴さに繋がっているよう。
せっかくお持ちの個性を銀座色へ変えてしまうお店もありますが、勿体ないです。

既に半年先まで予約がいっぱいという人気急上昇中のお店ですが、現在の飲食店バブルに対してもしっかり認識されていました。
無理をしない、「らしさ」を大切にし続けて欲しいと思っています。

また、当店の魅力は純粋に感じる楽しさ。
晴山が癒しをくれるお店なら、当店は楽しさをくれるお店です。
しのはらさんの軽妙な語り口、お弟子さんとの掛け合い、話して聞いて尽きることがありません。
お弟子さん方の魅力も強く誰とお話しても楽しいです。
私も気を付けないと・・・思いつつ気が付くとお話してしまう、お客様がお話に夢中になってしまうのが分かります。
たくさんお話でき贅沢な時が過ごせましたが、6月位から17時台でも満席スタートとのこと。
ちょっと寂しいですが、人気店なので仕方ありません。

たくさん食べたのを覚えていて下さり、ご飯を多めに焚いて下さっていました。
恥ずかしいやら嬉しいやら・・・でも純粋に嬉しかったのでこの日もたくさんいただきました。

以下が訪問時のお料理です。

お酒 風の森

クリアな甘さがある、溌溂とした味わい
爽やかな余韻を残し飲みやすいです

香煎茶

先付 鮑と自家製胡麻豆腐、雲丹、伊勢海老に土佐酢の煮凝りをかけて

北海道蝦夷鮑に自家製胡麻豆腐、雲丹、伊勢海老、そこに岩茸と白魚を乗せ、緑はちしゃとう
金時人参と大根でお正月らしく紅白を演出、花穂紫蘇を散らし土佐酢の煮凝りをかけたもの

飾りは環柳
古来中国で旅人へ無事に帰還できるよう願い渡されたというのが始まりで、現在ではお正月床の間に飾られる同じ時期に再会の願いを込めた縁起物

器は鶴
羽を広げた鶴で一年の飛翔を願います

前回同様に華やかな先付け
自家製胡麻豆腐のもちっとした弾力が印象的
素材は多く使用していてもソフトな味付けにしてあるので不釣合いになることがありません
土佐酢もきつくなくさっぱりとしたスタートです

椀物 松葉蟹真薯と餅、神馬草、柚子を添えて

昆布が引き立つすっきりとした味わいで松葉蟹真薯の自然の甘みが引き立ちます
神馬草は海藻で癖のないお味
松葉蟹真薯の上に芳ばしく焼いたお餅
お餅は量があると重くなってしまいますが、薄切りなのでセンターになり過ぎません
どこか素朴で温かみのある椀物

お造り 明石のハリイカと玄界灘の鰆、大間の中トロ

鰆は藁焼きでその上にはキャビア
添えられた酢橘を絞っていただきます
薫香漂う脂がのった鰆にキャビアから程よい塩分が補われ好相性
この丁度いい着地点にもっていくためには鰆の脂のりもあるので、通常の味付けより難しいかもしれません

中トロは110キロ
辛味大根と山葵、昆布を醤油で炊き寒天で固めた煮凝りと一緒にいただきます
鮪の質は上々でとろっとした口当たり、脂のりがあっても綺麗なお味

ハリイカは残った煮凝りや小皿の柑橘とお塩、土佐醤油でさっぱりいただきました

羅臼の白子、柚子釜飯蒸し

滋賀の甘い酢飯に高品質として知られる羅臼の鱈の白子に餡をかけ柚子釜で蒸したもの
餡は柚子とちり酢、醤油を合わせたもの
醤油の芳ばしさがふわっと伝わりますがしょっぱくはない、絶妙な量
こういったバランス感覚に秀でているのがしのはらさん
通常の飯蒸しの味付けとは異なるセンスが光る一皿

八寸 活もろこに海老芋、小巻海老、トラフグの白子和え、穴子、海鼠、蕗、蛸、酢蓮根、クワイ、子持ち昆布、鴨、卵真薯に熨斗梅を乗せて

お造りの前に紹介されたもろこ、焼いてはち切れる位卵を含んだ姿はかなり立派で驚きます
ほろっと甘い卵が溢れ、ふわっとした身
自然の良さをそのまま伝えてくるお味

奥の葛屋根の器に入っているのは能登の海鼠
硬めで癖のあるイメージですが、柔らかく仕上げてあり癖なく誰でもいただけるお味になっています

小皿には蕗、海鼠腸をかけて
蕗と言えば海鼠、海鼠腸の塩気を生かしておつまみに最適なお味

穴子は明石で蕩ける口当たり、柔らかな鴨は琵琶湖の青首鴨、海老芋は富田林、小巻海老はそのままいただいても全く刺さることもなく柔らかく甘やか
六角小鉢のトラフグの白子和えはやや甘く、卵真薯はふわふわで熨斗梅と良く合います

熨斗梅やクワイ等お正月らしさも散りばめ、お酒にも合いそうなシャープなものから柔らかなお味まで幅広く表現した八寸

フォアグラ最中

中はフォアグラを出汁で焚いて擂り潰したもの、中心に旬のあんぽ柿が入っています
前回同様、パリパリの最中種
フォアグラの塩気とあんぽ柿の甘みが合わさり独創的でも自然にいただけるお味

春巻き

鼈のゼラチン豊富な皮やエンペラ(周囲の柔らかい部分)の出汁とフカヒレを合わせた春巻き
辛子をつけていただきます
かなり熱々、皮はパリパリで中はとろとろ
出汁は効いていても甘みがある丸みを帯びたお味

焼き鼈

骨付き、お塩と山椒でいただきます
ぷりぷりの鼈、芳ばしく甘みがありもちろんくさみは全くありません

ツキノワグマ

前回と同様とろみを効かせた甘めですがしっかりお出汁がでた熊鍋
セリでさっぱりいただきます
じんわり広がる温かさ、くさみは全くありません
普通は浮いてしまいそうですが、日本料理の流れの中で不自然さなく仕上げているのは秀逸

お食事

ベースはマナガツオと蕪の菜っ葉でお味を変えて三段階でいただきます

<マナガツオと蕪の菜っ葉>
マナガツオの旨みが強く、焼いた芳ばしさもあり美味

<マナガツオと蕪の菜っ葉ご飯の上に伊勢海老の出汁と湯葉を合わせて>
出汁の香りがふわりと漂いますが、マナガツオの濃さも負けていません

<マナガツオと蕪の菜っ葉ご飯に鼈出汁のかきたまをかけ、海苔を散らして>
海苔の良い香り漂う、鼈出汁のかきたま汁をたっぷりかけてお雑炊に
マナガツオと鼈出汁はぶつかり合ったお味かと思えば、総合的な美味しさ
複雑化して難解というよりはしっくりくるお味に落ち着かせています

甘味 きんとん<曙>

1月らしく曙
百合根、卵黄、つくね芋を合わせた自家製きんとん
柔かで風味はしっかりしていても、甘みは控えめ

お抹茶

次回は4月です。

<12月期献立>

都内の店舗では持ちえないフロンティア精神の中にしなやかさがあり、訪問すれば誰しもがこれは人気店になると思えるお店。
これからもっと世界が確立されていくと思うと期待せずにはいられません、日本料理店として定期的に訪問させて頂く三店舗目となりました。

予約は10月に行った所最短が12月の平日。
スタートは17時からでお願いしました。

香煎茶

先付け 柚子釜

柚子で蓋をされた状態で供され、最後に篠原さんが蓋の果汁を絞って下さいました

内部はこっぺ蟹、外子内子、北海道の雲丹、蝦夷鮑、海ぶどう、子持ち昆布、下層には天然帆立を炙った上にキャビア、ボタン海老、最後にジュレをかけ花穂紫蘇を散らしてあります
その時によって内部構成は少し異なることもあるそう、驚くほど色々詰めてありました
ジュレのお味はすっきりしていて適度な塩気、柚子は仄かに香り幅をもたせます
どれも主張し過ぎない柔らかで豪華な先付け

椀物 鼈

琵琶湖の天然鼈の椀物
胡麻豆腐と焼いた長葱、芽葱を散らしたもの

お出汁がよくでていて旨みと甘みがある温かみのあるお味
鼈もお肉としてのお味が残っていて美味

胡麻豆腐はねっとりしていて甘く、葱が香ばしくこれが想像以上の糖度

濃さは丁度よくものすごく濃厚と言う訳ではありません
お聞きすると後半にツキノワグマが提供されるから抑え気味にしているそう

流れに沿ったお味ですが、鼈の椀物としての美味しさはしっかり楽しめます

松葉ガニ

甲羅を器にし松の葉を添え供されたのは柴山港 松葉ガニ
下は鮟肝シャリ

シャリは柔らかでお味は松葉ガニの糖度をより高める甘めの味付け
蟹そのものの強さというよりはソフトにいただく一皿

お造り

明石の鮃、明石のハリイカ、大間の鮪、氷見の鰤

鰤は藁で炙ってあり、いぶり漬けと辛味大根を巻いていただきます
ハマボウフウの左に見えるのは昆布醤油煮凝りで鮪に添えて、ハリイカは酢橘塩でいただきます

鮪は一週間程ねかせたものということですが、綺麗なお味

鰤は燻した香りが生きていて平坦にお味にならず良かったです

八寸

晩秋を思わせる枯れ朴葉上に飾られる八寸
銀杏の葉、山茶花、センリョウで色を添えると共に中に多くのお料理が隠されています

構成は

奥の六角皿には新蕎麦の実を使ったとろろ
手前の揚げ物は車海老と海老芋
手前に鮎なれずし
右に真鴨と明石の穴子奥に蕪
カボスの器に入っているのは九州の小肌に小さくカットしたラフランス、みぞれで和えたもの
明石のタコ
滋賀の水口かんぴょう
玉子しんじょう

となります

新蕎麦の実を使ったとろろは出汁はなく、蕎麦湯だけで表現したもの
出汁がなくても物足りなさはなく自然なお味で、ぷちぷちとした食感と香り、粘りが楽しめます

車海老はサクサクで甘みが冴え、鮎なれずしは当然ながら塩気がしっかりでクリーミーでお酒が欲しくなるお味
タコも柔かでお味が染み込んでいて、水口かんぴょうは柔らかすぎず、べちゃっと水っぽくなくしっとり加減が絶妙
九州の小肌とラフランスはどんなお味かと思いましたが不自然さはありません、カットされたラフランスが仄かな甘みを与え酸味を和らげていました
玉子しんじょうはふんわり香り良く、穴子はふわふわに蒸してあり真鴨も癖なく旨み有

お味だけでなくワクワクするような八寸

フォアグラ最中

中はフォアグラを出汁で焚いて擂り潰したもの、中心に旬のあんぽ柿が入っています

パリパリの最中種にとろとろのフォアグラに塩気、フルーティーなあんぽ柿が交わり独創的ですが美味

意外に展開力があるお味で他のフルーツでも合うお味に仕上がっています
実際にフルーツはシーズンによってマンゴーだったり変わるとのことでした

琵琶湖天然鰻

白焼きとタレ焼きで供されます

皮がパリパリで身はかなりのふわふわ系
下に敷かれているのはおかひじき、ほんのりお出汁が効いていておひたしになっているのがポイント
添え物ではなくお味に広がりをもたせるものでした

炊き合わせ

雲子と百合根を生ゆばで包んで揚げ、九条ネギあんをかけたもの

お出汁はクリアで酢を感じながらも柔らか、円やかなお味
上手く調和しているのでトータルで味わう一皿

ツキノワグマ

篠原さんが鍋で作って下さいます
とろっとしていて甘めの仕上がりですがお出汁はしっかりでています

ツキノワグマのお肉は薄切り、柔かで癖なく旨みがあり美味
時々油っぽかったりにおいがということがありますが、もちろん一切なく上品
人を選ばない日本料理の一品として綺麗に纏まっていました

山椒をかければピリッと引き締まり途中から入れれば変化が楽しめます

お食事

ベースは蟹味噌ご飯でお味を変えて三段階で楽しめるように構成されています

<蟹味噌ご飯>

供された時からかなり強い蟹の香り
お米は柔らかめでダイレクトに凝縮した旨みが広がります
前面に出てくる強さのあるお味

<鼈のお出汁で炊いたふかひれあんかけ>

蟹味噌ご飯の上にかけて供されます

先程の攻めてくるような蟹のお味は鳴りを潜め、鼈甲羅でとった出汁が効いていて全く違うお食事に
最初は鼈が交わるとどうなるかと思いましたがお味の変化が見事、しのはらマジックが素晴らしいです

<ツキノワグマ鍋出汁>

先程の甘いお出汁で雑炊の様にいただきます
満腹でもスルスルと重くなくいただけました

甘味 葛焼き

本葛と黒蜜を合わせて焼き上げた葛焼き
中に百合根が入っています

この価格帯で本葛を使用するとは思いませんでした
お味は香ばしい甘さがあり、それなりに甘みはありますが引きが綺麗なのが特徴
中央にほっくりとした百合根が入っている優しい温かさがある甘味で個性があり良いお味でした

次回もとても楽しみなお店です。

DETAIL DATA

ico

アクセス、営業時間など

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