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鮓職人 秦野よしき

鮓職人 秦野よしき

星2つ半が平均

創作×熟成。オリーブオイルのイタリアン要素~人気店の口内調味まで取り入れた業で魅せる鮨

2013年すし道をオープン、2015年現店名へ改名。麻布十番7番出口より2分程。熟成創作鮨の新風と言われている鮓職人 秦野よしき。

大将は秦野芳樹氏。
84年生まれ、人気店の大将が多い80年代組。
イタリアンを融合した創作と熟成鮨でメディアにも紹介され、最近話題です。
現在は1回転で当月のお席はほぼない状態、5月頃から2回転になるらしく少しお席が取りやすくなるかもしれません。

お店は鳥居坂下の角地の2階にあり、エントランスには大将直筆の達筆?な丸文字の掛け軸が下げられ良い意味の脱力系に思わず笑ってしまいます。

創作と言うだけでも珍しいですが、大将のギャグも際立つお店。
滑るかどうかを心配しながらあえて毎回ギャグを挟みます。
大柄でギャグを連発したり、LINEのスタンプを出したり、海外経験があるので英語の接客が可能など積極的なイメージですが実際は距離感を見てお話される方。
返しはもちろん面白く1人でも楽しい時を過ごせました。

シャリは色味が強い赤シャリ、握り自体は小さめでシャリ量は少ないですが粒がしっかりして印象に残ります。
その色からシャリがお味の主体になりそうなのですが、ネタとのバランスが良く前に出すぎません。
ですが、大将からシャリだけいただくとかなりの酸味。
「赤シャリが流行っているから使っているのではない」という大将。
シャリ単体ではこんなに尖っているのにも関わらず、ネタといただくと浮かないのは見事です。

おつまみやネタ、この日いただいた全てから感じるのは「他の鮨屋ではないものを届けたい」という心。
美味しさを追求していくのにも敏感で、皿を温めネタとシャリの温度を近づけることにより口内調味をおこさせる初音鮨の業も取り入れていました。

奇抜さを目指した中での創作ではなく模索する道が類を見ない程の創作に向いた印象です。

ネタは熟成がベースですが、熟成独特の濃厚一辺倒ではなく旬を残す新しい在り方を提供。
創作に名乗るに相応しい緻密な計算から成り立つ鮨。
現在はおまかせのみ、追加をいれてもお会計は14000円程です。

 

鮪の酒盗とクリームチーズ

乾杯のパイからとって、パイからスタート
パイの中にはマグロの酒盗とクリームチーズ
酒盗よりクリームチーズの風味が強く、塩気は酒盗で補っています
揚げたてではありませんが、酒盗の癖を上手くクリームチーズがカバーしていました

帆立豆乳白味噌仕立て

北海道噴火湾の大きな帆立を中心に北海道の玉ねぎ
帆立は肉厚、とろっとした玉ねぎと合わさりストレートに美味しい鮨屋の温かいクラムチャウダー

太刀魚

千葉県竹岡の太刀魚、4日間寝かせて炙ったもの
お皿に底に柚子を絞り、自家製のポン酢をかけています
通常焼きでいただくことが多い太刀魚
違いはパサつきがなくしっとりしていて濃厚さが増している点
燻した様な香り高さもありいつもいただく太刀魚とは違う側面が見られました

鮟肝と奈良漬け

北海道噴火湾の鮟鱇の肝を60度で沸騰させずに2日間、添えられるのは奈良漬け
奈良漬けはしっかりした味付け
通常のあん肝と違いはねっとりではなくふわふわの食感であること
こちらもお店の特色が味わえる一皿

鯖の棒寿司

能登の鯖をしめ鯖にして半身にカットして白シャリを挟み、海苔を敷き、オリーブオイルをかけて蜜柑の皮を散らしたもの
蜜柑は「自身の未完」を表しているそう
シャリには白ごまも入っています

オリーブオイルでコクを蜜柑の皮で甘酸っぱさを演出していて鯖独特のにおいを感じずにいただけます
最後にふわりと柑橘の香りが漂う綺麗な引き

これのみ相性を考え白シャリ、単純に赤シャリにしない所に拘りがありました

豆腐とクリームチーズの味噌漬け

かけてあるのは胡桃と自家製の鰹節を叩いたもの
甘いスイーツの様なお味にまったりとした口当たりです

 

牡蠣

北海道釧路の牡蠣を低温調理30分間塩で揉み茹でて、燻製にし、オリーブオイルをかけたもの
火は通っていても肝の部分は生のお味が楽しめるようになっていました
時間と温度の調節が難しそうな一皿
生っぽいお味は好きでも、生は怖いという方も安心していただけます

ニシン

北海道網走のニシン
塩でしめて、酢でしめて、醤油につけて一週間寝かし炙ったもの
皮はパリッとしていて身は柔らか、小骨を心配されていましたが手間をかけていただいているので特に気になることもなくいただけました

 

ガリ

通常のガリもありますが、こちらも別皿で用意されます
鰹節、みりん、お酒、砂糖を入れた醤油漬けガリ
甘めのテイストではっきりしたお味なので握りを通してゆっくりいただきます

<ここから握りです>

赤貝

福岡の赤貝、塩揉み酢洗いして3日間寝かせたもの
歯切れよく香りも楽しめます

淡路の鯵、お皿で温めてシャリとの温度差を無くしています
初音鮨で見られる口内調味を用いていて、においが軽減され脂や甘みが増し身の柔かさもあり美味しいです

焼き茄子

高知県の茄子、鰹ベースのお出汁に漬けて大将曰く「揚げてナス」
ふわふわの茄子、甘みのある出汁は手間を感じさせるもので良く仕上がっていました

車海老

上に芝海老おぼろを乗せています
酢でしめてあり、甘いおぼろとのコントラストを楽しめます

金目鯛

千葉県銚子の金目鯛
皮を湯引きしてあるので硬くなく、身はとろっとした口当たりを邪魔しません

鮪トロ

那智勝浦、仕入れ~熟成まで1ヵ月かけたもの
上に乗せられるのは玉ねぎと醤油を煮詰めたもの
身はとろとろになり玉ねぎの風味が合わさりステーキみたいに創作らしく仕上げられていました

アオリイカ

包丁を多く入れた、大将曰くペレストロイカ
シャリとの間に葱と生姜を叩いたものを挟んでいます
とろとろの口当たりにねっとり感、甘みと風味が良くでていました

鮪赤身

トロと同じ那智勝浦、同じく1ヵ月かけて中心部のみ使用、柚子をかけたもの
こちらが不思議で熟成特有の柔かさはあってものっぺりとした濃厚はなくどこかフレッシュさが残っています
お聞きすると、これは漬けにした際に使用する醤油にフレッシュな鮪のエキスを合わせているから
よって旬×熟成が成り立つ他ではないお味
旬と熟成のいいとこ取りをしていて美味しさとお店のポテンシャルを感じます

藁で炙り、塩水で寝かせ、シャリとの間に山椒の身を煮詰めたものを挟んでいます
濃厚さがあり、後から山椒が効いてさっぱりした後口に

小肌

皮を剥き、一週間寝かせたもの
身は柔らか、やや甘みのある酸味に仕上がっていました

 

タイラ貝

愛知のタイラ貝、シャリとの間に海苔を挟んでいます
柔かな身、海苔の風味が良いので合っていました

のどぐろ漬け炙り

少し温かみがあり濃厚さあり

雲丹

のどぐろの余韻を残したまますぐにいただきます
よってこれのみ手渡し
こんもり乗せられた雲丹は北海道函館のもの

温かいネタから一気に冷たいネタに、印象深く刻まれるので雲丹の質に自信がないと評価が割れそうなアプローチ
お味は濃厚、海苔はいらない風味の強さがあり良質でした

穴子ツメ

醤油、酒、みりんを継ぎ足してふわっと仕上げ、表面のパリッとした焼きが光る穴子
砂糖を全く使用していない昔ながらの味付け
キリッとした味わいは他の鮨店ではなく、新鮮なお味で良かったです

干瓢巻

自家製の干瓢、甘めの味付けが酸味のあるシャリと高相性

 

鮨屋の玉はカステラに非ずと聞いたことがありますが、大将自らカステラの様と表現
炭火で焼いたふわふわな甘いカステラ風味の玉

つぶ貝<追加>

 

穴子塩<追加>

ツメよりもお酒の香りを強く感じ男らしい味わいです

 

どれも真剣に向き合っていらっしゃるお味で多くの試行錯誤が見られます。
指標となるお店が都内にないのでまだ道半ば感がありますが、ぶれずに追求し続ければ「秦野よしき」にしかない世界が確立できそうな鮨店でした。

DETAIL DATA

ico

アクセス、営業時間など

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