CHIUnE
星2つ半が平均
素材の力を引き出し、誰も知らない新たなる世界を確立していく予約困難店
2016年オープン、新富町駅から5分程。シンプルに食材の凄みを引き出すだけなく、多くの可能性を秘めたお料理で予約困難店となったCHIUnE(チウネ)。
オーナーは古田諭史氏。
お父様は、言わずと知れた22歳で独立した後、岐阜に開化亭をオープンし独自の中華の世界を確立、2014年に銀座にフルタをオープンした古田等氏。
現在、開化亭は長男が任されています。
諭史氏は次男、2009年岐阜にRestaurant Satoshi.Fをオープンし瞬く間に話題店となり2016年新富町に移転、CHIUnEをオープンさせました。
CHIUnEも開店早々から人気となり、現在は初回ですとなかなかお席は取りにくく、リピーターとなっても年内のお席はほぼない状態。
前から訪問したかったCHIUnE、今回は2回転目の21時スタートにて初訪問してきました。
外観は目立ちにくく、最初通り過ぎてしまうほど。
お時間になりドアが開き、店内に進むと縦に長い造りでシンプル、清潔感がある空間。
お店はカウンターのみです。
終了までは2時間程、最後のトークを楽しめば滞在は2時間30分程でしょうか。
古田さん始め皆様話しやすく、また話しかけても下さり、初訪問でも分け隔てなく迎えて下さいました。
久しぶりのイノベーティブのお店。
当店に伺うまでは私のイメージのイノベーティブは、華美な世界でした。
ただ、CHIUnEが見せてくれたのはそれとは全く異なるもの。
評判通り素材のポテンシャルを引き出す業に優れているのは説明するまでもなく。
そこに加え、私は素材を引き立てる業にも驚かされました。
細やかなギミックを潜ませることにより素材力を主軸からズレないで昇華させる、他の食材と合わせても必ず一点に向かいピュアな味わいで魅せてくれます。
ギミックを風味としては見せずセンターの風味を引き立てる要素に収めているので、本来の風味が引き立ち前に出てくる素材感。
よって表現も原点回帰するので、私の語彙力がないからかもしれませんが、なかなかここに特徴ありと説明できない部分もあります。
全体のお料理・流れについてですが、提供間隔は長めで盛付は素材数を絞っているのでシンプル、量は多くありません。
提供間隔はトークと主に古田シェフが炭火で焼かれる薫香やお料理への最後のアプローチを見ながらで繋ぐ構成となっていました。
よって香りがキーになっていて、空間に居ると気付くのは換気が良い点。
お皿ごとに全く異なる香りを提供するのにも関わらず、前のお皿との香りの重なりが起きません。
お話をさせていただくと、ダクトを大きくし空気の入れ替えに配慮しているとのことでした。
お料理は「椎茸とビーフン」というそのものだけで提供されるお皿も。
ただ、これだけでも人が美味しいと驚かせる業をもっています。
それは華やかさからくる驚きよりも、より大きなものかもしれません。
私は多くのお店に行っている訳ではありませんが、多少経験した後に出会えた方がより良さが伝わりそうな印象。
高級食材だけではなく多様な食材に対しても、スマートにまるで魔法の様にすっと風味を前に引き寄せるCHIUnE。
求めるのは量ではない、間隔スピードでもない、見た目の華やかさでもありません。
イノベーティブの壁と思える奇抜さを取り除き、洗練さを。
見た目の驚きではなく、素材のお味に驚きを。
知らなかった本来の味を教えてくれ、数少ない食材だけで勝負できる力を持ち、真の美食の世界へと誘う予約困難店CHIUnEの最初のステージは下記になります。
◇金萱烏龍茶
HOJO淹れている間にも甘い香りが漏れる金萱茶
華やかな香りですが、お食事の邪魔をしない上品な飲み口です
◇レスベラトロールワシントン
渋みを効かせフルーティーでありながらすっきりした味わい
甘さをかなり控えているので、ノンアルコールでも赤ワインの代わりとしても役割を果たせます
◆鮎
ご説明を受ける前に鮎の香りが充満して、確かに鮎という認識はありますが・・・姿はスープです
鮎は岐阜県和良川のもの
口に広がるのは鮎そのもの
旨み、ワタの苦味、凝縮した風味
ですが、くさみは全くありません
どこか不思議な気持ちにさせるのは骨っぽさのない口当たりの滑らかさ
舌に触る感覚は優しいのにお味は力強い
あまり火入れをしたら風味が飛んでしまいそうな繊細さと、短時間であれば癖が出そうな感じです
この一皿だけで鮎をたくさんいただいた様な満足感
余韻も素晴らしいです
掴めそうで掴めない、ですが伝わることはシンプル
形は変わっても素材はこんなにも力強くアプローチできるということ
翌日になって思い出すとその時の風味が蘇るよう、美味しさと感銘を受ける一皿です
◆原木椎茸とビーフン
そのものです、原木椎茸とビーフン以外の素材はありません
予想はしていましたが、斜め上をいきました
この地で、この2種類の素材で、一皿として勝負できるのはCHIUnE以外ないでしょう
ビーフンは弾力が強く、原木椎茸からは素材の持つ濃さ、コクもありバターを使用しているように思えます
ですが、実際はバター不使用
原木椎茸を炭火で焼き、焙煎した胡麻油、ソフトな貝のエキスなどを忍ばせたそう
素材の風味を引き出すのが上手い方はバターを使わずともコクを出すことができる気がします
ただ、実際可能にする方は少なくあまり出会ったことはありません
すっと奥に手を伸ばし、引き出し、細やかなギミックで美味しさに深みを持たせる一皿です
◆鱧
骨切りして天草の鱧を炭火で焼き、フルーツトマトと水ナスを使用した冷製、秋田のじゅんさいを散らして
いただくと正しくフルーツトマトと水ナス、直球で目が覚める様
爽やかダイレクトで喉越しが大変良く、適度な塩気があり季節感溢れるお味
芳ばしい鱧は淡泊でも旨みがあり、綺麗に纏まっています
◆黒トリュフとポルチーニのコンソメスープ
素材はシーズンによって異なりますが、当店のスペシャリテ
蓋でいただく寸前まで蒸らし香りを閉じ込め、いだたく瞬間に開放します
立ち上る芳香の素晴らしさは誰もが歓声をあげてしまうほど
イタリアのポルチーニはバター不使用、噛むことにぎゅっと旨みが溢れて深いスープに合わさります
そこにオーストラリアの黒トリュフが嫌みになりすぎない程度に深みを出していく、少しずつゆっくりと染み渡る様にいただきたいお味です
◆鰻
長良川の天然鰻に下にじゃがいもソース、キャビアを乗せて
焼きは強くはないソフトなサクサク感
滑らかなじゃがいもソースと塩気はキャビアで補います
素直な美味しさにじゃがいもの甘さ、最後はキャビアの塩味で纏まる上品な一皿です
◆鴨
埼玉県の窒息鴨を炭焼きしたもの
その下にはなめこのソース、赤は赤酢と黒胡椒等を合わせたソース
皮目が芳ばしく柔らか、強烈ではなくじんわり美味しくなめこのソースが深みを赤酢と黒胡椒のソースがキリッと仕上げます
◆豚
天城黒豚に郡上味噌、唐辛子、にんにく、フルーツをマリネにして炭焼きしたもの
味噌の風味が効いていて、弾力と旨みがあり様々な要素を潜ませているようですが自然過ぎてご説明いただかないと分からないレベルでした・・・
◆鮑ご飯
大原の黒鮑を使ったご飯、お米はコシヒカリの約1.5倍と言われる大粒の龍の瞳
鮑は日本酒と少量のバターを使用して仕上げてありますが、ここまでの流れ通り基軸は鮑本来の風味
強さだけに押す濃厚さではありません
◆紹興酒アイス
牛乳と卵、紹興酒を入れたアイス
ベストの状態なので滑らかで絶妙な冷たさ
まったりしたかと思いきや紹興酒の風味が浮き立つ様に前に出てくる段階制のあるお味
◇白茶
緑茶に近いお味ですと言って供されました
丸みがありつつすっきりとした味わいです
飲み終わると古田さんが自ら淹れて下さったり、食後のトークを楽しんだりゆったりした時間を過ごせました
食の幅を広げてくれるお店、お聞きすると年内のお席は殆どありませんでした。
次回はおすすめいただいたジビエのシーズン、12月に伺います。
洗練されたCHIUnEのお料理が今から楽しみです。
DETAIL DATA
アクセス、営業時間など
- 【店舗名】
- CHIUnE
- 【住所】
- 東京都中央区銀座1-22-12
- 【営業時間】
- 17:30~: ┃21:00~:
- 【定休日】
- 日 月